御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
第三章
「春海ちゃん? 春海ちゃーん! おーい」

「ッ!? す、すみませんっ」

またやってしまった。今日はこれで何度目か。

絵里さんの声でハッと我に返ると、弾みでデスクの上のマグカップが揺れて慌てて抑える。

「なーんか今日はおかしいわねぇ。トリップする回数多すぎ」

絵里さんが腕を組んでため息をつく。

「すみません……」

そうだ、この間の婚活パーティーの記事を書いてる途中だったんだ。それで蓮さんのことを思い出して……。

あまりにも昨夜の出来事が信じられなくて、いまだに夢から目覚めることができないでいるみたいだ。何度も頬をつねってベタなことをしてみたけれど、ちゃんとヒリヒリ痛かった。

――俺と結婚してくれないか?

頭の中にまだ彼の言葉が鮮明にぐるぐる巡っている。
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