御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
――春海を誰にも渡したくない。結婚しよう。

――……はい。

恋愛と結婚は相性と勢いだ。

そう思ったら、もうなんの迷いもなくなって、先日、彼からの熱烈なポロポーズに「yes」と返事をした。

あぁ、私……蓮さんと、その、結婚するんだよね?

誰に問うわけでもなく、心の中で現実を確かめる。

――春海、綺麗だ。全部見せて。

――君の肌は白くて柔らかくて、甘いな。

あぁぁーっ! もうなんかおかしくなりそう!

蓮さんのしっとりとした肌から、ダイレクトに伝わる熱い熱。昂った息づかいを思い出すだけでも身体の芯がウズッとする。

いけないっ! 待ち合わせに遅れちゃう!

時刻は間もなく八時になろうとしていた。

結婚すると決まってから毎朝、秘書の緒方さんが運転する高級車で蓮さんが迎えに来てくれるようになった。けれど、私はいまだに自分の貧乏な家のことを話せておらず、近所の公園が迎えの待ち合わせ場所になっていた。だけど、貧乏暮らしをしていることや家族のこととか、いつかは話さなきゃいけない日が来る。

それを知って彼はどう思うだろうか、と思うとやっぱり不安でしょうがない。自分の気持ちはもう完全に蓮さんに向いている。

いまさらなにもなかったことにされたら、もう立ち直れないかも……。
< 64 / 123 >

この作品をシェア

pagetop