御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「おはようございます」

いつもの公園にダッシュで向かうと、緒方さんが車の外に出てすでに私を待っていた。この平凡な住宅街に相変わらずピカピカに洗車された高級車が異様に浮いて見える。

「あれ、蓮さんは……?」

後部座席のドアが開かれるとそこにいつも座っているはずの彼がいない。

「申し訳ございません。今朝方早く遠方より急な仕事が入ってしまいまして、高杉様もまだお休みになられている時間帯だろうと……おそらくのちほど連絡があるかと思います」

そうなんだ。私がまだ寝てると思って気を遣ってくれたんだ。

緒方さんは恭しく一礼をして背筋を張った。そして後部座席に乗るように促され、物珍しそうに見てくる通行人の視線から逃れるように、私はそそくさと車に乗り込んだ。

蓮さん、忙しいんだ……。

前に一度、どんな仕事をしているのか尋ねたことがあった。彼は有栖川コーポレーション不動産事業開発営業部統括部長でもちろんベリーヒルズビレッジ以外でも関わっている仕事はたくさんあると言っていた。けれど、今はより良いベリーヒルズビレッジの“街づくり”に専念しているみたいだ。婚活パーティーのようにイベントを企画したり、どんな建物・施設が必要なのか計画したり仕事について語る蓮さんは生き生きとしていてかっこよかった。
< 65 / 123 >

この作品をシェア

pagetop