僕ときみの、ありふれた恋
無視してやろうかこんにゃろ、とか思ったけど、それはそれで多分面倒なことになる。
振り返ると、何故かムスッとした瀬戸が立っていた。
「ボンのこと、見すぎ」
「は?別に立川くんだけを見てたんじゃないし。なんであんたがそんなこと言ってんの」
「俺のほう全然見ねえから、なんかすっげームカついた」
まるで、私に好意を寄せてるみたいな言葉が、私の中の何かを貫いた。
「とりあえず・・・俺のほう、ちゃんと見てろ」
そう言って立ち去った瀬戸の耳は赤くて、それにつられて、私の顔も少し熱くなって。
この日から、瀬戸のことをちょっとだけ意識し始めたのは、誰も知らない話。
「俺と付き合えよ」
「・・・仕方ないから、付き合ってあげる」
「ふ、お前、素直じゃねー」
「あんたにだけは言われたくない」
番外編1 END