極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
いつのまに用意したのか、古渡さんが店の焼き菓子セットを差しだした。

「こ、これはありがとうございます」

父は恐縮しきって受け取っているが、……まあ、慣れろっていう方が無理だよね。

「じゃあ、元気でな」

「美代子さんたちによろしく」

先にエレベーターで降りていく父を、手を振って見送る。

「……映画は父に会わせるためですか」

「えー、なんの話だ?」

古渡さんは笑って誤魔化しているが、映画くらいなら家のシアタールームだって事足りたはずなのだ。
わざわざ外に連れ出したのは、そのあとに父へ会わせるため。

「父に会わせてくださって、ありがとうございます」

きっとこんなことがなければ、ずっと私たちはすれ違ったままだった。

「別に?
澪音は父上に詫びたいと言ってただろ?
それに今日は、父の日だから」

「あ……」

言われてみれば、そうだ。
六月第三日曜の今日は、父の日だ。

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