極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
次のエレベーターが到着し、ふたりで乗り込む。

「それに俺は、澪音に感謝しなければいけないことがあるんだ」

「感謝?」

ボタンを押し、古渡さんは私の方を見ずに階数表示を眺めていた。
エレベーターの中はふたりっきりで、他に人はいない。

「俺も澪音と一緒で、父親に好きなことを諦めさせられた。
本当は俺は、インテリアデザインの勉強がしたかったんだ。
でも古渡の跡取りである俺には許されなかった」

話す彼の声は、どこか他人事のようだ。

「そんな勉強をする暇があるなら、経営学、帝王学の勉強をしろ、ってさ。
もし、妹にも同じように強要するなら絶対阻止してやろうと思ったが、妹は好きにできてよかったと思っている」

ふっ、と小さく、彼が笑った気配がした。
いつも思うけれど妹さんの話をするときは本当に優しげで、可愛がっているんだなとうかがわせた。

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