彼が冷たかった理由。
渉を追いかけるついでに、私は帰路に着く。
家は同じ方面なので、運良く同じ電車かもしれないし、近くの公園にいたりするかもしれない。


「っ、さむ」

10月は寒い。
本州はまだ暖かいと聞いた。

羨ましいな、なんて思う。

こっちなんて、最低気温5度だったのに。


公園の横を通る。
カタン、と遊具から音がしてみると、渉に似た人影が見えた。

行くつもりなんてなかったけれど、つい足はそっちへ向かう。


「......なんで来たの」

「なんでだろうね」

渉は遊具の、上に体育座りしたまんま、動かない。
私は近くのベンチに荷物を下ろして、ブランコに乗った。

荷物が無くなったからか、背中が寒い。

「別に、渉のことが嫌いなわけじゃないよ。
...でもきっと、渉は私のことを嫌ってるから」

「嫌ってなんかっ、」

「言葉にしてくれないと分からないの。
無言で通り過ぎられたって分からない。

手を振りほどかれたら、否定の意味だとおもっちゃう」

互いに背中を向けているけれど、声ははっきりと聞こえる。

「少し距離を置くべきだと思うの」


《別れようとは思わないわけ?》


「きっと私が、渉に近づきすぎたんだよ」


《依存ってやつ?》
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