彼が冷たかった理由。
今日は日直の日。
隣の席の彼と2人で、だが、彼はずっと寝ているので、大して関係ない。

一人も同然だった。


「ぐぬぬっ、届かないぃ〜...!」

物理の授業の終わり。
物理の先生は身長が高いから、高いところに板書をする。

だから、私のチビな身長では届かない。

「手伝うよ」

「田中君...!ありがとう」

田中君が今なら神に見える。
...野球部の坊主だから、仏か。

「相変わらず寝てるんだね、渉は」

「疲れてるんじゃないかな」

「うわぁ、こんな優しい彼女勿体無いだろ」

俺のとこ来る?なんて悪ノリをしだす。
そんな彼の肩に、誰かの手が乗った。

「...誰が人の女に手出していいって許可した?」

「わ、渉っ...冗談に決まってるだろ!?」

怒るなよ、なんて宥めてくれるが、彼の怒りは沈みそうにもない。


「渉が寝てばっかりいるから、手伝ってくれてるだけだよ」

ね、田中君、なんて彼を横目で見る。
うんうんうん、なんて必死に頷いていた。

「...僕が悪いって言いたいの?」
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