好きになった先生は猫かぶりで腹黒な先輩だった
ミナト先輩が奏でる音楽が好き。
鍵に触れるきれいな指が好き。



猫をかぶってたどこまでも優しい先生が好き。
腹黒でめんどくさそうにしながらもいつも手を差し伸べてくれるミナト先輩が好き。



『うわっ!』



体重を預けていた扉が開き身体が後ろに倒れる。



「何してんの?」



そんな私に手を伸ばして立ち上がらせてくれる。



『ミナト先輩、わたしっ』



「まった。」



立ち上がった私をそのまま強く引いて練習室に入り扉を閉めた。
そして私はミナト先輩の腕の中。



香水かな?柑橘系のいい匂い。



「奏。」



初めてだった。
しっかり名前を呼んでくれたのは。



『はい。』



どっくん どっくんと鼓動の音が聞こえてくる。
それは私のなのか、ミナト先輩のなのか。



「俺の夢かなえてくれない?
付き合ってください。」



『ミナト先輩、ずるいです。
私の夢も叶えてください。』



「なに?」
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