大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
布団から出て着替え始めた彼に続き、慌てて散らばっていた長襦袢を身に纏う。


「お見送りをさせてください」

「そんなことはいいから休みなさい。初めては女に負担がかかるものだ。無理をさせた自覚はある。止められなかったしね」


敏正さんはあのネクタイをまた締めたあと、私の額に口づけをする。


「いいかい? これは命令だよ」
「承知しました」


私は優しい命令に根負けして、そのまま部屋で見送った。

こっそり窓から見ていると、玄関を出た敏正さんがふとこちらに視線を送るので、気づかれてしまった。

彼は仕方ないなぁというような表情を見せたが、すぐに笑顔になり自動車に乗って出勤していった。


「行ってらっしゃいませ」


小さくなっていく自動車に声をかけたあと、自分の体を抱きしめる。

敏正さんに愛された体は少し気だるい。
しかし、ようやく本物の夫婦になれた気がして感無量だった。
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