大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
昨晩のとろけるような幸せな時間を思い出し、彼に体を預けそうになった私は、我に返って離れた。


「孝義さんも無粋だな。今朝くらいゆっくり出てくればいいのに」


一橋さんは、昨晩が私たちの初めての夜だったことなどご存じないのよ?

いつもは威厳ある敏正さんの子供じみたわがままに笑みがこぼれる。

こんな一面があったとは知らなかった。


「郁子。なにを笑ってるんだ?」
「わ、笑ってませんよ?」
「嘘つけ。お仕置きだ」


彼は素早く私の唇を奪う。


「まずいな。止まらなくなる前に出かけるよ。郁子、体は平気か?」
「は、はい」


本当は下腹部に鈍い痛みがある。

けれども、愛おしい旦那さまと繋がれた証なのだから、なんていうことはない。


「まだ眠り足りないだろう? もう少し眠るといい。春江には昨晩帰りが遅かったから寝かせてやってくれと言っておく」


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