大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
あっという間に人が引いたことに驚きつつ、壇上の敏正さんを見つめた。


「郁子」


敏正さんに呼ばれ、足を進める。

これからどんな告白が待っているのかと思うと心臓が破れそうに激しく動いているが、もうすべてを話してもらえるという安堵があるのも否めない。


「おいで」


敏正さんに柔らかい声でささやかれ、父ではなく彼の隣に立った。

私はだまされてなんていないと、彼の表情でわかったからだ。


「ど、どういうことだ?」


父が口火を切ると、敏正さんは落ち着き払った様子で話し始めた。


「この式典はあの男をおびき寄せるための偽物です。先ほどの客は全員警察関係の人たちでした。本当の式典は明日予定されています」

「なにっ……」


父は引きつった顔で言葉をなくす。


「僭越ながら申し上げます。父上。あの男にいつまでむしり取られるおつもりですか?」

「わ、私はなにも……」


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