私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!~生存ルート目指したらなぜか聖女になってしまいそうな件~
 ニジェルは、勇者の血族に連なるという厳格なる騎士の家系に育ち、騎士(ナイト)として淑女(レディ)を守護するものだと教え込まれている。そこに、ヒロインの聖なる乙女カミーユが現れる。彼女の下町育ちゆえの奔放さがニジェルを引き付け、また無謀な行動から、ニジェルは自分しか彼女を守れないと思うようになっていく。そして、守り守られる二人はいつしか恋に落ちるのだ。

 しかし、聖なる乙女の務めを果たすヒロインは多くの男性の目に触れることになる。それを嫌がって、所有の印の入れ墨を彫り鎖をつける。ヒロインもその束縛に満たされる。外れない鎖でつながれた二人は、とても幸せに暮らした――とゲームは締めくくる。

 他のエンドに比べれば、これでもかなりマイルドだが、もちろん悪役令嬢はイリスである。バッドエンドの場合、双子の弟に相応しくないとイリスはヒロインを刺殺する。メリバの場合、ニジェルはヒロインとの仲を邪魔するイリスを、重い鎖を何重にも縛り付け抵抗できなくさせた上に、噴水で水死させ、自死として片付ける。むろん葬儀も出されない。よくR指定を潜り抜けたものだと思う。

 絶望に目を見開き水の中に沈むイリスの青白い顔がそれはそれは色っぽかった。『ハナコロ』の売りは、悪役令嬢の死にざまにもあるのだ。作画にはとても力が入っていた。ぶっちゃけ、ヒロイン一人のスチルよりはよっぽどイリスの断罪スチルの方が力が入っていたと思う。

 乙女ゲームとして、それでいいのかは不明だが、だからこそ、コアな男性ファンもいたと聞く。ニヤニヤとして「イリスたーん」とクリアファイルに頬ずりをするオタク仲間男子を思い出して、イリスはゾッとした。いや、その時は同じようなことをイリス自身もしていたのだが。

 自分があの目で見られるのは嫌なのよ! 見るのはいいけれど!! 
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