五年越しの、君にキス。
「だいたい、俺は全然納得してないんだよ?五年前、梨良が俺から勝手に離れていったこと」
ライトブラウンの綺麗な瞳が、五年前と同じ温度で私のことをじっと見つめる。
「五年前に梨良が俺と別れてこれを突き返してきたとき、本当に他に好きなやつなんていたの?」
スーツのポケットに手を入れた伊祥が、銀色に光るものを私の目の前に差し出してくる。
それは、リングの部分に小さなピンクダイヤモンドが三つほど埋め込まれた、確かな見覚えがある指輪だった。
付き合っていた頃、伊祥が一周年の記念日にプレゼントしてくれたものだ。
「何があって俺と別れようって決めたのか知らないけど、電話一本で別れを切り出されたと思ったら、急に音信不通になって、梨良が住んでたマンションの部屋も空っぽで。おまけに指輪は郵送で返ってくるし。結構ショックだったんだけど」
渇いた声で笑いながら、伊祥が親指と人差し指の先でシルバーの指輪を弄ぶように転がす。
それから、その動きをピタリと止めたかと思うと、真面目な顔付きで私の目をじっと見つめた。