きみにしかかけない魔法
「そっか、それじゃあ大変だ」
「お風呂とかね、けっこう見えなくて困るよー。でも、目が悪くてよかったーって思うこともあるかな」
「へえ?」
興味津々そのものの表情。
水羽くんって、話し上手だし聞き上手でもある。相手の話を引き出すのがすごく上手なの。
水羽くんになら、何でも話したいって思えるもの。
「このメガネ、すごくお気に入りなの。分厚いレンズの丸メガネ、実はね、大好きな少女漫画の主人公のチャームポイントなんだ。だから、おそろい、みたいで」
私が漫画にのめり込むきっかけになった、ある作品のヒロイン。
心が強くて優しくて、幸せな恋に落ちる、私の憧れの女の子。
あの子になりたいと憧れていた、だから、迷わずにこのメガネを選んだの。
私にとって、お守りのようなもの……なんだけれど。
「……コンタクトにするか、他のメガネに変えるか、そうした方がいいんだとは思うんだけどね」
「え、なんで?」
「このメガネ、暗く見えるんでしょ?怖いって」
聞こえていない、気にしていない、そういうフリをしているだけ。
耳から入ってくる言葉に、なにも思わないなんてできない。
そんなつもりはないだろうちっぽけな言葉たちも、降り積もれば、ぜんぜん、私の自信を奪うにはじゅうぶんだった。