キミだけのヒーロー
追いかけっこ
タオルを鞄に入れると、急いで家を飛び出した。

それから自転車にキーを挿そうとしたがその手を止めた。


――歩いて行こう。


ふとそう思った。

いつもサユリを家まで送り届けるために二人で歩いた道のり。


二人で過ごした時間を思い出しながら、ゆっくりと行こう。

そう思ったんだ。




途中、二人でキャッチボールをして四つ葉のクローバーを探した川沿いの道を通った。


思わず頬が緩んで笑いそうになる。

あの時はほんとビックリしたなぁ……。

女の子からキャッチボールを誘われるなんて、今後の人生でもそう無いような気がする。

おまけにあんなすごい球投げるしなぁ……。

サユリには本当に何度も驚かされた。


DVDレンタルしてきてって頼めば、“フランダースの犬”借りてくんだもんなぁ。

しかも二人して号泣するし。


思い起こせばサユリと過ごした日々の中で嫌なことなんて何一つなかった。

あの時、オレがバカな勘違いさえしなければ、オレ達はずっと上手くいってた気がする。

なんて、それはうぬぼれが強すぎるかな。
< 164 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop