キミだけのヒーロー
《クリノ……ケン……って書いてあるような気がするんですけどぉ》


《クリノケンさんですかぁ。ひょっとしたら、テレビを見てるかもしれませんね。何かメッセージを画面の向こうにどうぞ》


《え……と、ハイ。じゃぁ……》


リカコちゃんは姿勢を正して座り直すと、コホンと小さく咳払いをして、テレビカメラをじっと見つめた。


《クリノケンさん。あの時は親切にしてくださってありがとうございました。今のわたしがあるのは、この傘のおかげだと思ってます。あなたは、わたしにとってヒーローのような人です》


「へぇ……親切な人がいるもんやなぁ」


マキがオレの隣でカフェオレを飲みながら感心していた。


「ほんまやなぁ。――って、ほらっ。もう行くで! 遅刻すんなよ!」


オレはマキの背中を軽くはたいた。


「あれ? 雨止んだみたい。でも後でまた降るかもしれへんから傘持っていきなさいよ」


相変わらず心配性のオカンは窓の外を覗きながらオレ達に言った。
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