キミだけのヒーロー
かませ犬
Mサイズのコーラだけを買い、足取りも軽く階段を1段飛ばしで2階へと駆け上がった。

サユリとの待ち合わせにいつも使うファーストフード店。

店内は夏休みということもあって、中高生の集団で賑わっていた。


サユリの学校は今日、登校日なのだとか。

オレも部活は午前中までなので、お昼を一緒に食べようということになり、ここで待ち合わせしたのだ。

フロアをキョロキョロと見渡してみても、サユリの姿はない。

どうやら、オレの方が先に着いたようだ。

二人で並んで座れるようにと、窓際のカウンター席を選んだ。

ここからだとサユリがやってくるのが見えるかもしれないな……なんてワクワクしながら、コーラ片手に片肘ついて、窓の外を見下ろす。



「あははははは――!」


ふいに、背後で店内に響き渡るほどの大笑いが聞こえて、思わず振り返った。

見ると、オレの後ろのボックス席にS女の制服を着た女の子達がいた。


別に聞き耳を立てるつもりもないが、彼女達はかなりの大声で盛り上がっていたため、嫌でもその会話が耳に入ってくる。


「それにしてもさぁ、ほんっと上手くやったよねぇ……サユリ」


え?

サユリ?

ひょっとしたら、サユリの友達かもなぁ。

にしちゃ、全員ギャルでかなり派手だけど……。

まぁ、最初にサユリを紹介してくれたマユもこんな感じだったし、彼女達がサユリの友達だとしても不思議ではないか。



「本命に近づくために、まずは友達からってか?」

「え? 何それ? 何それ?」

「えー。アンタ知らんのー? サトシ君に近づくために、サトシ君の友達ととりあえず付き合ってるらしいで」



オレは口に含んでいたコーラをゴクリと飲み込んだ。



いったい……何の話だ?
< 79 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop