キミだけのヒーロー
オレは感情をできるだけ押し殺した。

彼女を責めたてるセリフはいくつも浮かんだが、そんなこと言えば、自分が余計に惨めになるような気がした。


「オレのことからかってたん?」


「え?」


「アルバム見て一目ぼれなんて……ウソやったんやろ?」


「それはっ……」


その瞬間サユリの顔色が変わった。

何か言いかけた言葉を、唇を噛み締めて飲み込んでいる。

それが全ての答えだと思った。

やっぱりそうだったんだな。


「悪いけど、もう連絡せんとってくれ」


オレはそう言うと自転車を動かした。

そしてそのまま一度も振り返らずに全力で駆け抜けた。

ちょっと前まで、あんなに幸せだったのに……。



こんな終わりがやってくるなんて思ってもみなかったな。

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