クール王子はワケアリいとこ
　皓也のことは考えても分かる訳がない。
　取りあえずはもう少し様子を見よう。

　そう気持ちを切り替えて今日の授業を受けていた。

　そして三時間目。
　主にクラスの女子が待ちに待った国語の授業。

　加野さんの席の近くの女子は「ホントにカッコイイんだよね？」「違ってたら今度ジュース奢(おご)ってもらうよー」なんて話している。

　わたしはまあ、普通に準備をして待っていた。
　優香も席は近くないし。

　ざわざわとした教室。まだ立っている人もいるところに、ドアが開けられて噂(うわさ)の安藤先生が入って来た。


　立っていた人は急いで座り、みんなが先生に注目する。
　そしてさっきまでと違う感じでざわざわする。
　ヒソヒソと何かを話している様子だけが分かった。

　でもそうしてしまう気持ちはちょっと分かる。


　安藤先生は確かにカッコ良かった。
　髪は少し長めなのかも知れないけれど、セットは完璧で清潔感がある。
　スーツ姿が正にスタイリッシュという感じで、見た目だけならビジネスマンっぽい。

　顔立ちは整っているとまでは言わないけれど、目がパッチリ二重(ふたえ)で印象的(いんしょうてき)だ。


「初めまして。三波先生の代わりに国語を担当する事になった安藤(あんどう)　好人(よしと)です。よろしく頼むよ」
　そう言ってみんなを見渡した安藤先生は、わたしと目が合うとニコリと笑った。

「！？」

　わたしに笑顔向けた？
　何で？
　……いや、気のせいだよね。きっと。


　その後は普通に授業が始まった。

　安藤先生の授業は面白くて頭に入ってきやすかった。
　三波先生には悪いけど、安藤先生の授業の方が良いかも知れない。

　そんな授業だった事もあって、三時間目が終わるころには男子女子関係なく安藤先生のファンが増えていた。


　その後の話題はほとんどが安藤先生のこと。
　休み時間となると色んな所から安藤先生の名前が聞こえて来る。

「先生結婚してるのかな？」
「そういえば何歳なんだろう？」
「隣のクラスの人が五時間目の授業のとき聞いたんだって、彼女いないって言ってた！」

　と、他の話題も勿論(もちろん)あったけれど安藤先生の話が圧倒的に多かった。
　もうファンクラブでも出来そうなくらい。

　周りの様子に少し驚いたけれど、もっと驚いたのは優香だ。

「彼女いない？　マジ！？　何かうれしー！」
　入ってくる情報に一喜一憂(いっきいちゆう)している優香が目の前にいる。

　芸能人とかの話でも「へーそうなんだ」とあっさりとした反応をするのに、安藤先生の話となるとまさに熱烈ファンだ。

　これはファンクラブでも出来たら真っ先に入りそうだな。
　わたしは驚きながらもそんな風に思った。
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