明日が見えたなら  山吹色

「ただいま」早い帰宅に七海は驚いていた。

「おかえりなさい」

驚いている顔も可愛くて『ただいま』のキスをする。

「七海も仕事の後で家事大変だろ 簡単なのでいいぞ」

「うん ありがとう、まだ出来ないからお風呂に入ってて」

「悪いな、じゃあ入って来るな」

風呂に入っていると七海が声を掛けて来た。

「彰くん?ごめんね。ドラッグストアで買い忘れたものがあるから行ってくるね。私は味見してたらお腹いっぱいになったから、彰くん悪いけど一人で食べてね」

「オレも行こうか?」

「ううん 大丈夫、一人で行ってくるよ
じゃあね、いってきます」

 オレがとりつく島もなかった。そんなに急いで何を買い忘れたんだ?

風呂から出るとケータイに着信があった。開いてみると瑛からで

《愛妻弁当だって? お前らラブラブだな》

いやいやあれは違うんだ!急いで返信する。

《あの弁当は愛妻弁当ではないから!
同級だったヤツに パソコンを選ぶの相談されて設置したから、お礼で弁当渡されただけだよ》

《あのさ 普通奧さん持ちに弁当作って渡すか?それになんだよ設置って、中野とパソコン売り場で会っただろ?『浮気じゃないですよね?』って心配してたぞ》

《浮気の筈ないだろ!だけどヤバイと思うか?》

《思いっきりヤバイだろ 七海ちゃんにはバレていないのか?》

《ああ 今回は容器は使い捨てだったから……でも、パソコン設置してカレーライス食べて来たのは知ってる》

《なんだよ、それ?夫婦仲大丈夫か?》

《大丈夫だよ、説明したし》

《結局弁当はどうしたんだ?》

《昼に渡辺と一緒になって事情を話したら、自分のコンビニ弁当と交換してくれた》

《渡辺 わかってるな 先日も話したが 彰汰 マジ気を付けろよ》

《その事で相談したい 空いてる日はあるか?》

《今週の金曜日はどうだ?》

《大丈夫だ よろしく》

《了解》

七海遅いな。夕食を食べ終えてもまだ帰宅しない。

さすがに心配になりケータイに連絡する。

《どこまで行ったんだ?迎えに行くから連絡しろ》

《連絡しなくてごめんなさい 偶然同僚と会ってカラオケに来たの もうちょっと楽しんで帰るから先に寝ていて下さい 》

‘’なんだよ、だったら先に連絡くれよ‘’
 連絡が取れて安心した。

《帰るとき連絡くれれば迎えに行くよ》

《遅くなるときはタクシー乗って帰るから大丈夫だよ》

《わかった、気をつけて 帰ってこいよ》

《うん おやすみなさい》

《おやすみ》

23時過ぎていたがまだ帰宅しない。七海は日頃から飲み会も少ないからたまにはいいかもな。先に寝るか。

翌朝起きると七海の姿はなかった。書き置きがあり、もう出勤したらしい。
 オレは七海が作った朝食を一人で食べた。


「ただいま」
 
「おかえりなさい、私も帰って来たばかりでまだ夕食出来ていないのごめんね」
 
 七海の顔が辛そうに見える。

「いいよ、それより体調悪いのか?」ハグをしながら七海の顔を覗き込んだ。

「大丈夫だよ」と七海は答えるが、笑顔を取り繕っているのがわかる。

「無理するなよ」七海の上からキスを落とした。

「うん」

「着替えて来るから一緒に支度しよう」それほど料理が得意ではないが簡単なものなら大丈夫だろう。

「うん、ありがとう」

 二人で夕食の支度をした。
 
 結局は、かぼちゃの煮物と鶏の照り焼を解凍して、作ったのはほうれん草のお味噌汁だけだった。

 七海と一緒に食べるが、「やっぱり調子悪いみたい」と少食の七海。

「どんな症状なの?」

「少しだるいだけだから」

「病院へ行ってみれば?」

「もう少し様子を見てからにする」

「そうか?」‘’心配だな‘’

 食べ終わり、片付けをしようとする七海。

「片付けはやるから、お風呂に入って早めに休めよ」

「ありがとう」とリビングを出て行った。
 
 オレが、寝室へ行くと電気がついているが七海は寝ていた。

 寝顔を見ると涙のあとがある。

 電気を消し、七海が起きないようにそーっと横に入り七海を抱き込んだ。

「なぁ頑張るのはいいが、たまには頼れよな」

 聞こえないとわかりつつ呟いた。
 
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