ドキドキするだけの恋なんて

パリッと 糊のきいた ワイシャツは 真っ白で。

クールビズなのに きちんと ネクタイをして

手には 薄手の背広を 持って。


タケル カッコ良くなったね。


半歩後ろを 歩く私は

息苦しいほどの 懐かしさで 

タケルの背中を 見つめる。


「んっ?何か 言った?」

「ううん。タケルも 大人になったなって 思っただけ。」


「何か 話し遠いよ。こっちこいよ。」


一瞬 立ち止ったタケルに 私は やっぱり 捕まってしまう。


「気にすんなよ。あず美とは いつも こうやって歩いただろ?」

「……?」


肩を抱く 腕の感触も 見上げる横顔も

全部が 懐かし過ぎて。


別れていたことさえ 勘違いかと思うほど

タケルは しっくりと 私に 寄り添った。



ねぇ タケル… 何を考えて いるの?

タケルも今 私を 懐かしいって 思ってる?



駄目だ… 私は また タケルに 従ってしまう。


あの頃 どんなに タケルが 好きだったか。


タケルと 別れた後 どんなに 辛かったか。



全部 なかったことにして。


私が 好きだった タケルだけを 探してしまう。


それで いいの…?


誰か 教えてほしい。








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