ドキドキするだけの恋なんて

週末 上原さんと会って いつものように 食事をして。


「少し 飲んで行こうか?」


上原さんに 言われて 私は 頷いたけど。

何となく 嫌な予感が していた…


会った時から 上原さんは 変わらない態度で。

今までと 同じ様に 私に 接していたけど。


タケルが 上原さんに 何も言わないわけはない…


上原さんが 私のために オーダーしてくれた

フローズン・カンパリを 一口飲んで。


「冷たい… 甘くて 美味しいですね。」

上原さんは 横顔で 優しく笑ってくれた。


「あず美ちゃんって 野本君と 知り合いなの?」


キターーー!


やっぱりね。

タケルは 上原さんに 余計なこと 言ったんだ。


私は 一瞬 無言で 上原さんの目を 見つめて。

でも 絶対 誤魔化したら いけないって 思って。


「あの… 聞いてもらっても いいですか?」

私は 覚悟を決めて タケルとのことを 上原さんに 話した。



途切れ途切れで 上手く 話せなかったけど。


静かに 頷いて 聞いていた 上原さんは

私が 話し終えると


「それで あず美ちゃんは 今も 野本君のこと 好きなの?」

と 私の目を 真っ直ぐに 見つめた。


私は 驚いて 大きく 首を振る。


「終わったことです。あそこで 会った時は 驚いたけど。」

「それじゃ 何も 問題ないね?」


いつになく 上原さんの目は 熱くて。


今までの 静かで 落ち着いた 上原さんの

芯の強さを 感じるような 情熱的な目で 見つめられて。


「本当は もう少し 俺を 信用してもらってから 言うつもりだったけど。あず美ちゃん、俺と 付き合ってもらえるかな?」


「こんな私で いいんですか…?」


「もちろん。」


「よろしく お願いします。」


言ってしまった。

もう 引き返せない…


上原さんとなら 穏やかで 優しい時間が 過ごせる。

不思議なくらい 寛いで 自然な私で いられる。


だから 間違ってないよね?


タケルに 振り回されて 間違ったら いけない。


今は あの頃とは 違うのだから…


「ゆっくりでいよ。」

優しい 上原さんの目に 見つめられて。

私は 泣きたいような 気持ちになっていた。


「上原さんのこと 信用してるし…」


ポツリと 私が言うと 

上原さんは 嬉しそうな笑顔を 見せてくれた。







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