ドキドキするだけの恋なんて

真夏の太陽が 照付ける空。

車の中は 快適な温度に 空調が効いていて。


「翔真さん…の 実家って どこ?」

名前を呼ぶことに 慣れなくて。

口ごもってしまう私に 翔真は 優しく笑う。


「実家? 埼玉の秩父。あず美は? 東北だっけ?」

「うん。仙台。埼玉なら 近くていいね。」


「でも 田舎だよ? 東京とは 全然 違うよ。文化っていうか 生活習慣が…」

「あー。何か わかる。私も 東京に出て来た時 すごく驚いたの。東京って 特別だよね?」


「人も家も 多いし。情報量が 凄いから。ちゃんと 自分で 選別しないと 埋もれちゃうよね? 東京に…ハハッ。」


高速道路を 走る車の中 

翔真は 時々 私を見ながら 静かに話す。


「だから 東京の人って 他人に干渉しないのかな…?」

「うん。田舎って 回りが 煩いよね。人の噂 大好きで…」


「そうそう! あの家の子は 成績が良いとか。どこの学校に 合格したとか。ちょっとでも 変わったこと すると すごく 目立つし。」

「ハハハッ。わかる わかる。俺も よく 親に言われたな… ご近所には ちゃんと 挨拶しなさいとか。」

「結局 自分も 噂好きに なってて。それくらいしか 刺激がないって ことなのかな…」


最初に 会った時から 感じていたけど。

翔真の話し方は 穏やかで 圧迫感がなくて。


安心して 話せるから。


つい 私は いつもより 饒舌になってしまう。


翔真の 温かい視線を 感じて

照れて 俯く 私…






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