ドキドキするだけの恋なんて

「どうしたの?待ち伏せなんて。タケルらしくないじゃない…」


宇佐美さんの姿が 見えなくなって。

私は 初めて タケルを 真っ直ぐに見た。


「電話じゃなくて 顔見て 話したかったんだ。どうしても。」


「お茶する?その辺で。」


「せっかくだから メシ食おうよ。宇佐美さんと 食べるはずだったんだろ?」


タケルの言葉に 私は 首を振る。


「お茶にして。タケルと 食事するつもり ないから。」

「何だよ。上原さんに 気を使ってるの?」


「そうじゃないでしょう…」


私は タケルより先に 歩き出して。

近くのカフェの ドアを開けた。


タケルは 苦笑して 私の後を 付いてくる。


絶対 タケルのペースに 飲まれない。

私の気持ちを ちゃんと 話そう。



こんな風に 私を追いかけるなんて

タケルらしくない…


付き合っていた頃は タケルが

いつも 主導権を 握っていて。


タケルに 付いていくことが 心地良かった。


あの頃の 私は…



翔真と 付き合って 私は

対等であることの 安心を 知ったから。



もう私は あの頃の私じゃない…







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