あなたの左手、 私の右手。
先輩はおばあちゃんを見つけてくれた人や、探してくれていた人にお礼を伝えてくれて、病院へ向かう手配もしてくれた。
念のためにと救急車で病院に運ばれるおばあちゃん。

救急車で病院についてから待合室のベンチに座っていると、先輩が来てくれた。

自分の車だからと、救急車に同乗しなかった先輩は帰ったのだろうと思っていた。

なのに、先輩はゆっくりと私の方へ向かって歩いてくる。

その足音が誰のものなのかすぐにわかった私は顔をあげて、先輩と目があった瞬間、再び涙が溢れて止まらなくなった。

顔をくしゃくしゃにして泣き始める私に先輩が両手を広げてふっと笑う。

「来い。」
その言葉に、ベンチから立ち上がり先輩の方に走り出す。
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