子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
「待たせたな。行くか」

二人連れで出るわけにもいかず、予め渡されていた鍵を使って一足先に彼の車の中で待っていた。

病院は、昨夜のうちに柊也さんが調べておいてくれた。女医さんっていうのは、彼の外せない条件だったらしい。その理由をあれこれ考えてしまうけれど、深く考えるほど自分に都合の良い妄想が膨らみそうで、臆病な私は考えることをやめた。



「橘さん、どうぞ」

職場では旧姓の〝加納〟で通しているから、〝橘〟と呼ばれることは全く慣れていない。呼ばれただけで緊張してしまう。

柊也さんはすっと立ち上がると、私の手を取って一緒に診察室まで来てくれた。
初めてのことで不安と緊張でいっぱいだった私としては、正直ありがたかった。来てもらってよかったって思う。



「橘紬さんですね?」

「はい」

「妊娠の可能性があると……尿検査の方では、妊娠の反応が出てますよ。それでは、内診をしてみましょう。ご主人はそのままここでお待ちください」

こんな場面でもなければ、〝ご主人〟なんてワードを言われたら、ドキリとしていたかもしれない。けれど、初めてのことにガチガチになっている今の私は、それどころではない。

一人で隣の部屋に移動する。
一度、健診で経験したことのあるものの、慣れることのないあの台に、そろっと乗る。

「橘さん、画面見えますか?」

「はい」

「これが赤ちゃんですよ。心拍はまだ早いかなあ……」

と言いつつ、一応試してくれるようだ。


トクトクトクトク……

大人より速いその規則正しい音は、間違いなく赤ちゃんの心拍。

「聞こえましたね。うん、問題ないでしょう。
お疲れさまでした。それではお支度が整いましたら、先ほどの部屋へお戻りください」





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