子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
「えっ……」

驚きの声をあげたのは、俺の方だった。
頑張っている紬を甘やかしたくて、いつもこのタイミングで頭を撫でてやるところだけど……

こんなこと、初めてだ。細い腕で抱きしめ返してきた紬は、そのままそっと俺の背中を撫でていた。それはまるで、俺を宥めるかのように。

「紬?」

「ごめんねえ。どうしても雅也が中心になっちゃうのは、わかってね」

思わず、彼女の首元に顔を埋めていた。
そんなこと、頭ではちゃんとわかっている。雅也が中心であたりまえなんだ。

「柊也さん、大好きよ。あなたがいてくれたおかげで、雅也にも出会えたのよ」

紬は俺が漠然と抱える不安を、わかっているのかもしれない。

彼女を抱きしめる腕に、思わず力がこもる。素肌でこうして抱きしめ合っているだけなのに、繋がっていた時以上の満足感が広がっていくから不思議だ。


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