子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
「あのさあ。生まれてくるなんの罪もない子を私生児にするわけ?」 

「シセイジ……」

「子どもが大きくなって、自分に戸籍上の父親がいないとわかった時、どんな思いをするのか。想像したことあるか?」

父親が、いない……

「で、でも。そんなことしたら、相続のこととか将来結婚を考えた時とか、絶対に問題が出てくるはずで……」

俯いて考え込む私の頭に、大きな手が乗せられた。

「バカだなあ、紬。俺を誰だと思ってるんだ?心配するな。そんなもん、どうとだってしてやる。なんなら、子どもが生まれたら、その子用の口座を作って生前贈与してやるよ」

「そ、そんなこと……」

「心配するなって。どんな形であれ、子どもは幸せに生まれてくるべきなんだ。なんの遠慮も後ろめたさも感じさせることなく。
それに、最長でも2年もの間紬を独占できるんだ。俺が子どもに渡すものは、そのお礼だと思っておけ」

こんなのダメだ。そこまでしてもらう義理なんてない。

でも、なんでだろう……
なにも言えそうにない。

頭に乗せられた大きな手は、思わず縋りたくなるぐらいの安心感を与えてくれるし、優しく囁く声音とその言葉が、私の心を揺さぶってくる。




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