プラチナー1st-

「? どうぞ?」

笑みを絶やさない和久田に問う。

「和久田くんはなんで私なんかに構うの? 浜嶋主任ほどではないけど、貴方も結構モテてるでしょ?」

紗子の質問に和久田はぱちりと瞬きをして、それからビールのジョッキをテーブルに置くと、照れくさそうに鼻の頭を掻きながら微笑みを浮かべてぽそっと言った。

「松下さあ、新人研修の時のこと覚えてる?」

「新人研修?」

新人研修の時と言えば、新しい環境に慣れなくて、日々胃を痛くしていた記憶がある。でも和久田と接した記憶はない。何かしただろうか?

何もした覚えはない、と言う紗子に和久田は残念そうな顔をした。

「覚えてないかー。…研修の初日に俺、お前の斜め後ろの席になったんだけど、俺も緊張しててさ、多分無意識に『緊張する』って言ったんだな。そしたら斜め前のお前が振り向いて、お前も明らかに緊張して顔強張ってんのに、梅しばくれたんだよ。『緊張しますよね』って言って。お前その時薬飲んでたよ。胃薬だったのかな。自分も緊張して具合悪いのに、赤の他人の俺に気ぃ遣うなんてやさしい奴だなあって思ったんだ。それが始まり」

和久田が語るエピソードをぽかんと聞いていた。えっ、たったそれだけのことで?
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