プラチナー1st-
「製品の名前のロゴをタレントのイニシャルの要素を掛け合わせて作ろうと思ってるの。これ、イメージ図。あとはメーカーが美白を謳(うた)ってるから、レイアウトに白か明るいグレーも入れて」

「うんうん、分かる」

仕事をしているときの和久田は本当に頼りになるアドバイザーだった。紗子の仕事に親身になって助言してくれるし、そういう面ではありがたい。

そして和久田に助言をもらった案件ほど、主任の承認がスムーズだった。やはり和久田が優秀なのだろう。この前もその前もそうだった。悔しいけれど、其処は認めざるを得ない。

そして、順調な仕事の波に、紗子も機嫌が良い。仕事の出来が良ければ主任に褒めてもらえるし、やっぱり仕事で悩むより成果が出たほうがやりがいを感じるのだ。そう感じられるのも和久田くんのおかげもあるとは思う。そこだけは認めても良い。

「それなら、そのラフが決まったら終わりにしないか? 飲みに行こう」

「うん、まあ良いわよ」

こんな会話も増えてきた。決して浜嶋主任を諦めたということではないが、主任と一緒にお酒を囲むのとは別の意味で和久田と店に行くのも抵抗がなくなってきた。あれかな。和久田が言ってた、『好意を持たれる方が心地良い』ってやつかな。和久田の言う通りになってしまっているのは悔しいけど、他の誰を騙せても自分だけは騙せない。そうなのだ。浜嶋を諦めたわけでは、本当にないのだが、その一方で紗子は和久田の気持ちを嬉しいと感じるようになっていた。
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