プラチナー1st-

ひとのもの(2)


それ以来、和久田くんは暇さえあればデザイン部に顔を出すようになった。勿論自分の仕事も忙しいから、毎日じゃないけれど、少なくとも週に一度は会ってる気がする。残業していても隣の机で待っているので、ますます主任と帰ることが出来なくなってしまっていた。

そんなわけで、今日も和久田くんに隣の席で待ち伏せされている。紗子の机にはやっぱり資料が積みあがっていて、それを見ながらデザイン概要を書き上げていく。和久田くんの目がふと紗子の資料に落ちた。

「あ、この案件、この前俺らが市場調査したやつか」

今紗子の手元にある資料は、化粧品メーカーの新商品に対する市場調査の結果だ。メーカー側のイメージとユーザーが求める商品の機能とを一致させて期間限定のサイトを展開する。そのためのデザイン画だった。紗子も色々仕事を経験してきて、今ではこういう仕事も任せてもらえるようになった。その分、主任の信頼に応えたいと思ってこうして頑張っている。

「思ってたよりもCMのタレント目当てで買ってる人多いのね。だから、そっちから攻めようかなって思って」

「あーそうだな。そう考えるのが正攻法だな」

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