プラチナー1st-
何時もいつもこんな思いをする。恋をするたびに思うけど、それでも懲りずに相手の居る人を好きになる。自分じゃ駄目だって何度も思うのに、どうしても恋をするのを止められない。

どうして何時も叶わない恋ばかりしてしまうのだろう。胸に滲んだ苦い味。恋に浮かれて忘れていたこの味を、何時か感じなくて良くなる日が来るのだろうか。

目頭がぐっと熱くなって紗子は目をつむった。堪えるようにぎゅっと目を閉じていると、不意に肩をぐっと引き寄せられた。

「……っ!?」

驚いて目を開くと、横に立っていた和久田が紗子を自分の方に引き寄せていた。ジャケット越しに感じる、逞しい胸。

「……泣くなら俺の胸にしとけ」

低い声で呟かれたそれに、涙腺が崩壊してしまいそうになる。ぎゅっと歯を食いしばった紗子を、今度は和久田が抱き寄せた。鼻腔に香るさわやかなコロンの香り。スーツの上から感じる体温に我慢できなくて、じわりと涙が浮き出てしまった。

和久田はシャツが濡れるのも構わず、路上で紗子を抱きしめていてくれた……。

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