死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
そんなことを考えていると、手が動いた。


指先には絵の具がついているが、それも気にせず熱心に筆をふるう。


未完成の絵はまるで魔法にかかったように出来上がっていく。


それを間近で見ている梓は本当に魔法を見ているような気分になった。


ずっとこのまま、完成するまで見ていたい。


そんな気持ちになった時だった。


一瞬、外が騒がしくなった。


その音に反応して視線がカンバスから窓へと移動する。


その時にはすでにサッカーボールがガラスにぶち当たる瞬間だった。


窓の向こうでサッカー部の生徒たちが目を丸くし、ボールを止めるために必死に手を伸ばしている。


しかし、届かない。


ボールは無情にもガラスを突き破っていた。


バリンッ!!


大きな窓が音を響かせて割れ、部室内に悲鳴が響く。


リュウヤさんは逃げる暇もなかった。
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