死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
入学時
不意に梓の視界は回転して廊下につっ立っていた。


キュッキュッと上靴で歩く足音が上の方で聞こえている。


梓は自分の意思とは関係なく、階段を上がり始めた。


そこで初めて自分がズボンをはいていて、男子生徒になっていることに気がついた。


(これってもしかして、厚彦の追体験……!?)


気がついた瞬間、火がついたように恥ずかしくなった。


自分は今好きな人と同じ体に入っていて、同じ体験をしているのだ。


それは通常の人なら絶対に体験できることではない。


梓は自分の心臓の早さを、この頃の厚彦に感づかれるのではと不安になった。


だって、それくらい早鐘を打っていたから。


どれだけ緊張しても追体験は終わらない。


厚彦は階段を上り、そこで足を止めた。


視界に入ったのは大きなダンボールを抱きしめるようにして運んでいる、ひとりの女子生徒だった。


その瞬間、梓は気がついてしまった。


これはたぶん、厚彦の好きな子だ。


この子へ告白することで厚彦は成仏できる。


そう思うと、チクリと胸が痛んだ。
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