死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
☆☆☆

ハッと息をのんで梓は現実に戻ってきた。


見ると自分の手はまだしっかりと厚彦に握りしめられている。


「自分の記憶を見られるって、なんかちょっと恥ずかしいな」


ドアの向こう側で厚彦の照れ笑いの声が聞こえてくる。


梓はそっとドアを開けた。


「厚彦の好きな人って……」


「見た通りだろ」


厚彦の頬は赤く染まっている。


梓はその顔を直視することができなかった。


「俺が告白して、それを受け入れてくれたら全部終わるから」


全部終わる……。


梓はその言葉を胸の中で繰り返した。


厚彦はいなくなるということだ。


せっかく両想いになったのに、その気持ちが通じ合った瞬間消えるのだ。


そう考えると止まっていた涙がまた溢れだしてきた。


厚彦が梓の体を引き寄せて抱きしめた。


「トイレとか、色気ねぇなぁ」


抱きしめながらも厚彦は冗談っぽく言う。
< 331 / 338 >

この作品をシェア

pagetop