Romantic Mistake!

改めて、名刺を見る。載っている会社の番号へ電話するのはためらわれるが、何枚かの名刺には手書きの携帯番号が書かれている。たぶん、桜庭さんの直通番号だろう。とろうと思えば、連絡はとれる。

羽田便の到着まで、あと四十分。どうしよう。

今すぐスーツケースを空港へ預けて観光へ出発するか、それとも連絡がとれるまで待っているか。本当なら見ず知らずの人のためにここで足止めをくう必要はない。でもーー。

『お怪我はありませんか?』

ジェントルマンな彼が困ると思うと、胸が痛んだ。私はそのままベンチに残り、じっと待つことにした。


* * *


なにもせずに四十分待ち、ついに彼の飛行機が羽田に到着する時刻になった。飛行機を降りて荷物の受け取りをする場面を思い浮かべ、心の中でカウントダウンをする。うん、そろそろかな。

ドキドキしながら、直通番号に電話をかけてみる。

プルルル、プルルルという呼び出し音の後、『はい……桜庭ですが……』という暗い声が聞こえてきて、ああこれはちょうど荷物が自分のではないと気づいたところだろうな、とわかった。
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