アオハルの続きは、大人のキスから


 甘く蕩けてしまいそうなセリフをいくつか言われたが、それも全部嘘。ただ、小鈴を揶揄いたかっただけなのだろう。

「なんだ……てっきり身体の要求だと思っていたのに……」

「ん? なにか言った? 小鈴」

「ううん、なんでもないよ」

 罪を償えなどと言われれば、もっととんでもないことを要求されるのではないかと思っていたのだ。例えば、愛人関係を強要されたりなどなど……

 想像力が豊かすぎて恥ずかしいが、そうでなくてよかった。罪滅ぼしになるのなら花嫁役ぐらい引き受ける。これで過去を許してくれるのなら、お安いものだ。

 それに、久遠が困っているのなら、微力ながらでも助けてあげたい。少しでも、彼の役に立ちたい。

 今の小鈴にとっては、これぐらいしか彼のためにできることはないのだろう。

 今更恋心を抱いて彼にアタックなんてできない。それこそ、どの面下げてというやつだ。
 だからこそ、少しでも彼の近くにいたい。たとえそれが、最後の関わりだったとしても。

 考え込んでいる小鈴に、椿は「とにかくよ!」と顔を近づけてくる。

「明日にでも、久遠に必ず謝ってくるのよ。それで、過去と踏ん切りをつけちゃいなさい」

「……うん」

「とにかく、小鈴は現状を打破しなくちゃ。絶対、絶対よ!」

「う、うん。でも、どうしてそんなに椿ちゃんは必死なの?」

 椿はとても従妹思いで優しい人だ。小鈴が高校生のときの恋に今も囚われていて、罪悪感に苦しんでいることを知り、助けてくれようとしてくれる。
 だけど、どうしてこんなに必死なのだろうか。

 小鈴が問うと、椿は目を泳がせたあと、なぜか逆ギレして命令してくる。

「小鈴はなにも考えず、ただ久遠のことを考えればいいの!」

「は、はいっ!」

「ってことで、はい」

「へ?」

「へ? じゃなくて、スマホを寄こしなさい」

「え? どうして?」

 不思議に思いながらも素直に椿にスマホを渡してしまう。


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