キス、涙々。


「……あっ、はい!いただきます……!」


すこし反応が遅れてしまったのは、ハギくんと奏絵さんがふつうの親子のように話していたから。

ハギくんがお母さんと呼び、奏絵さんがさくらと呼ぶ。


たったそれだけのこと、だけどふたりにとってはとても大きなこと。


意識して言うようにしているのはなんとなく伝わってきた。


だけどそれでもいいんだよね。


……これからだ。



ふたりの関係は、これから、どんどん戻っていく。




「ヤオー?つぶあんかこしあんだったらつぶがいいよねー」


「自分がつぶあん嫌いだからってましろさんに押しつけないの!」


「あはは、バレたー?」




わたしはまた泣きそうになってしまった。



ハギくんの見せた笑顔は、





今までのなかでいちばん……自然体だったから。




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