極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
「……はい。部長、ありがとうございます」
渋々千円札をしまって北條さんに礼を言ったら、彼はクールに返した。
「どういたしまして」
店を出て、ふたりに「今日はありがとうございました。遅くまで付き合わせてしまってすみません」と謝ったら笑われた。
「それ、部下が上司に言うセリフじゃないな」
「そうそう。藤原さんってホント真面目だね」
「あ……すみません。あの……では、今度こそこれで失礼します」
これ以上変なことを言って笑われないうちに帰ろうとするも、再び北條さんに腕を掴まれた。
「そう慌てて帰るな。タクシー呼んだから」
「ヘ?」
間抜けな声を発したその時、タクシーが二台やって来た。
「あの……私は家が遠いので電車で」
最寄り駅の方に顔を向けるが、北條さんは腕を離してくれない。
「遠いなら尚更タクシーで帰れ。業務命令だ」
「そうだよ。もう日付変わってるし」
ニコニコしながら滝川さんも相槌を打つものだから、強く言い返せない。
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