【短編】俺達の事情
「えーっと、モランボンひとつ下さい」


「優も人の話聞かないでケーキ注文すんな! てか、お前まだ“モンブラン”って言えねーのかよ!!」


「え、モランボンだろ」


俺はため息をついて、ケーキを注文した。


席につくと、周りは女子ばっかりで緊張する。


敬之は、さあ話しなさいといわんばかりにケーキに手をつけずに待っている。
優は興味があるのかないのか、モランボンをひたすら食っている。


「どうした?その経由をキッチリ話しなさい。 父さんは気になるんだ。 もちろん、母さんもだ」


「父親気どりはやめてください。 てか、母さんはケーキばっかり食わないでください」


もうモランボン5個めだよ、母さん。とため息をついた。


「いいから話しなさい! みっちりと、ねちっこく! お前の童貞卒業話を!」


「分かったよ! 話すから!! んなデケー声で言うなって…」


近くのテーブルの女子達がこちらをジロジロ見てくる。
俺は顔を真っ赤にして、敬之を止めた。優はケーキ10個目をたいらげた。



「実は昨日…同中のやつらから誘われて合コンに行ったんだ」


うんうん、と敬之は頷く。


「で、勧められるがままにお酒を飲んで…」


「ふんふん」


「そっからの記憶がなくて…」


「ほうほう」


「朝起きたら見知らぬ部屋のベッドで寝てて…」


「おお」


「よく考えてみたら、そこはラブホで、俺はパンツ一丁でベッドに寝てて、隣に合コンで会ったねーちゃんが寝てた…」


「ふむ」


「終わり…です」


しばらく沈黙が続く。


なんだこの間は。
非常に気まずい。


と思っていたら、ケーキばっか食っていた優が俺の肩をしっかりつかんだ。
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