千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
「…ハァハァ…タロくん…何で」

千歌夏様は、そのばに座り込むようにして崩れ落ちた。

「…千歌夏様…申し訳ありません。」

そう言って、近づこうとした時…
「いや、来ないで…」
彼女は、手で顔を覆って泣きじゃくる。

「…お嬢様…」
最低だ…本当に最低なクズ…誰よりも大切にしたかったのに…
千歌夏様のおそばにいられない…。
何で…俺は…こんな事をしたんだ…
もう取り返しがつかない…
だけど…誰かを好きになるなんて…嫌だ。
本当に自分勝手すぎる…バカ…

「お嬢様…許して下さいとは言いません。本当に申し訳ございませんでした。私の顔を見たくないなら、もう二度と現れません…いえ…今日限り…北條家とは関わりませんので…警察に突き出して頂いて構いません。千歌夏様の気のすむようにしてください…。」
彼女の前に正座をし、深々と頭を下げる。

「…お嬢様…どうか泣きやんで下さい…顔が腫れてしまいます…私は出ていきますので…」

深々と頭をさげながら、そう告げると…ゆっくりと立ち上がり…扉に向かって歩き出した。

最後に見るお嬢様の姿が泣き姿だなんて…

なんて愚かだったのだろう…
最初から、天使には似合わないとわかっていたのに…。見ているだけで、よかった…。
悪魔のような黒い感情をもつ醜い俺なんかが…
触れていい人ではなかったのだ。

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