千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜
「北條っ…」

聞き慣れた声が私の耳に響く。

「…あ、護衛くんの登場か…」

そう言って入江くんは、タロくんを見上げる。

「…?…」
何だか…空気が重いような気が…
タロくんは、私を隠すように入江くんの前に立つ。
「…何だよ波瀬…」

「…それは、こちらのセリフですが…」

………二人の睨み合うような視線に耐えられずに私は声を上げた…

「…入江くん…ごめんなさい…私…タロくんと一緒に行きます。」

そう言って彼をみると、入江くんは少し寂しそうな笑顔になっていく。

「そっか……じゃあ…俺行くわ。」

それだけ言うと手を軽く振ると歩いていった。

入江くんが行くとタロくんが振り返って私の顔を見ていた。

「…お嬢様…申し訳ありません…
もしかして…出過ぎた真似でしたか?」

タロくんは、いつもの完璧な執事の顔をする。
…でも
それを見ると胸がズキンと痛む。

「…ううん…大丈夫よ」

嘘…大丈夫なんかじゃない。

「………そうですか…」

ズキン…彼が何でもない顔をしているのが… 
痛い……

タロくんは、私の斜め前に止まり、私が歩き出すのを待っている。

……………………違う…違うの…

私は…タロくんに…

「……………どうして…なの…?」
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