呪イノ少女、鬼ノ少女
「いきなり何だよ?んな、懐かしい呼び方引っ張って来て」

『……別に。ただの気まぐれだよ』


無論、二人は兄妹などではない。

正真正銘、赤の他人だ。


雛子が兄と呼ぶのは、十年前、まだ二人が大和の故郷にいた頃の事。

自分より頭一つ大きかった大和を、年上だと勘違いして呼びはじめたのがきっかけだ。

暫くはその呼び方で定着していたのだが、数年前に雛子の方からやめると申し出てきた。

思春期に差し掛かって、羞恥が芽生えたのだと推察する。

一抹の寂しさはあったが、そもそも実の兄でも無ければ、年齢的にも年長者でもない。

雛子の言う事は最もだったので、二人は晴れて兄妹ごっこをやめることにしたのだった。


「妹は、やめにしたんじゃなかったか?」

『だから、気まぐれだってば!』

ぴしゃりと言われて、思わず肩を竦めてしまう。

機嫌が悪い。

相当嫌な事があったらしい。


「怒んなよ」

『怒ってない』


絶対に怒っている。

百万金を掛けて、断言出来る。

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