呪イノ少女、鬼ノ少女
二人の間の緊張が高まる。

澪はその間に割って入ることができず、頬を汗が一筋垂れていくのを拭うことも出来ない。

ポトリ、と顎の先から滴った一雫が握り締めた拳に落ちた。


「私にやましいことなんて何もない」

「言葉は信用にはならない。あんたの言葉は、特にね」

「大和、あんたッ」


動く左腕が大和の胸元に伸びる。

だが、腕は空を掴み、変わりに背後に回った大和が茜を畳の上に押さえつけた。


「俺はね、怒ってんすよ。雛子のことです。お分かりですか?」


背中の骨が軋みを上げる。

容赦など一切していないのだ。

見た目に反した温厚な正確はどこへいったのか、彼の瞳は今激情に染まっている。


「あんたは、雛子を守れなかった。傷つけた。母親じゃねぇんすか」

「…そうよ。私は雛子の母親よ」

「あんたはいつもそうだ。恥ずかしげもなく言い切りやがる。仮に、そうだとしても、最低の部類だよッ!!」

「否定はしないわよ、クソガキ」


茜はありったけの力で上体を跳ね上げ、大和を壁まで弾き飛ばした。

起き上がろうとする前に、その喉を足で押さえつけた。


「それでも私は雛子の母親よ。あんたの方こそ何なの?他人が私達親子の問題に口出ししてんじゃない」


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