呪イノ少女、鬼ノ少女
「っ…!か、母さん、口に物を入れたまま喋るなって何度言えば分かるのよ?」


やっぱり―――澪の予感は確信へと変わった。

いつものアレだ。


「行儀くらいで一々うるさいわよ、雛」

「二人なら我慢もするけどね。澪さんもいるのよっ!!」



予想通り。

スキンシップ変わりの取っ組み合いの親子喧嘩の始まりだった。


「澪ちゃんは家族も同然よ!それに、二人の時でもネチネチ言うじゃない!」


麺つゆが宙を舞う。


「なら少しはマナーを覚えてよ!」


ひっくり返った麺がちゃぶ台にぶちまけられた。


「マナーなんか守ってたら、ご飯がおいしくない!」


飛んで来た雛子の器の中身が澪に降り懸かる。


「おいしく食べる為のマナーでしょうが!!」


やれやれ、と澪は首を振る。

ついでに溜息も一つ。

どうやらしばらく終わりそうにない。


話に夢中になっていたせいで腹八分も食べていないのだが、もう食事を続けるという雰囲気ではなかった。

何より、頭からかぶった麺つゆがいけない。

昼間の汗とあいまってベタベタする。


「ご…ごちそうさまー」


澪は小声でそう断ると、戦場と化した居間をそっと抜け出した。


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