呪イノ少女、鬼ノ少女
翌日。


調子の悪そうな澪がのっそりと起き出すと、玄関の所で茜と雛子と大和の三人が押し問答をしていた。


「ほら!早く行きなさいってばー」

「い、言われなくても今行くもの!」

「そう言って何分経つと思ってんだ、雛子!見ろ、三十分も経ってんだよ!」


玄関に仁王立ちした茜。

ぎゃーぎゃー喚く雛子。

それから、雛子を外へ引きずり出そうとしている大和。


見れば、見るほど状況が分からない。


三十分も言い争っているらしいが、どうにも拉致が開きそうにないので、澪は恐る恐る茜たちに声を掛けてみることにした。


「おはようございます、茜さん」

「んー?やぁやぁ、澪ちゃん。昨日はあんな事があったのに、早起きだねー。偉いねー」


見れば、茜は珍しくスーツ姿だった。


黒のスーツもYシャツもパリッと皺一つない完璧な着こなしで、おまけにインテリ眼鏡まで掛けているものだから、三百六十度どこから見ても、完璧に働く女の姿になっている。


相変わらずのヘラッとした締りの無い表情なのが、惜しい所だが。

「明け方まで眠れなかったんですけど、どうにも気が落ち着かないみたいで、すぐに起きちゃいました。それで、何の騒ぎなんですか?」


チラリと、澪は雛子と大和のほうを見る。

中学校の制服姿の雛子を大和がムリヤリ引きずっていこうとしている。

昨夜は澪相手にたじたじだった大和も、雛子相手にはそういうものは出ないらしい。


「それがねー、雛子が学校に行かないって聞かないのよねー」


困ったわ~、と少しも困っていない茜は頬に手を当てている。
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