もうこれ以上、許さない
もうこれ以上、許さない
「あたしちょっと、この辺散歩して帰るね」

「相変わらず、暑いのに物好きだな。
まぁいい、変な男に気をつけるんだぞ」

「お父さん、まだそれ言ってるのっ?
そんなに心配しなくても大丈夫だよ」


あたしは、5年近く過ごした町を離れて…
地元の県に帰って来てた。

面接した派遣会社で、こっちの企業の募集を見つけて…
不適切な恋愛沙汰で迷惑をかけた事や、駆け落ちしようとした申し訳なさで、これ以上親に心配をかけるのはやめようと思ったからだ。
それと、もう逃げたくなかったから。

そう、元はと言えば…
風人にフラれた、6年半前のあの日。
その現実から逃げたりしなければ…
誰も傷付けずに、苦しめずにすんだから。


ただ、今日はお盆のお墓参りで実家に来てるだけで…
職場とその寮は、ここからだいぶ離れてる。
そうじゃなきゃ、こっちに帰って来れなかった。

だって、偶然あの2人に会うわけにはいかないから。
それは、辛くて耐えられないという理由だけじゃなく…

玉城さんは、風人を追っかけて来たと思って不安になるだろうし。
なんらかの対策を取られて、また家族が巻き込まれるのは嫌だから。
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