雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 なにもかもがお膳立てされていたと知って、龍宗は苦虫をかみつぶしたような顔になる。飛燕はそれを後ろでひやひやしながら見ていた。

 龍宗を座らせると、玉祥は当然のようにその隣に座る。龍宗の前には、見事な細工物の食器がずらりと並び、ところせましと色とりどりの菓子などが並べられていた。


 皮肉交じりに龍宗が聞く。

「このような立派な茶会に、皇后は一緒ではないのか?」

「ええ。お誘いしたのですけれど、そっけなく断られてしまいましたわ。わたくしたちはみな皇后様とも懇意になりたいと思っていますのに、案外と冷たいお方ですのね」

 憂う表情で玉祥が悲し気にまつげを震わせる。大人の色気を放つ艶やかな美妃だった。


 周尚書の娘だということでただの縁故の入宮かと思っていたが、どうやらそれだけでもないらしい。さすがに淑妃に選ばれただけのことはある、と、他人事のように龍宗は感心する。

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