冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
奈月はベッドに横になっている。状況的に和泉が運んでくれたのだろう。

「医者が待機している」

和泉の言葉に奈月は目を見開いた。

「お医者様を呼んでくれたの?」

「目が覚めたと伝えてくる。そのまま待ってろ」

和泉は奈月の返事を待たずに部屋を出て行く。彼の代わりに初老の医師がやって来た。

「失礼します」

奈月が戸惑っている間に、医師は手際よく診察を勧めた。

「はい、これで終了です。検査の結果が出るまで横になって待っていてくださいね」

「はい」

言われた通りベッドで横になって待っていると、再びうつらうつらして瞼が重くなる。

(どうして……眠くて仕方ない)

つい眠ってしまったのかもしれない。ドアが開く音にはっとして目を開く。

部屋に入って来たのは、顔を強張らせた和泉だった。

奈月は掛布団を掴み身を固くする。どうしても和泉と顔を合わせると緊張してしまうのだ。

「あ、あの……」

和泉は奈月を見下ろし冷ややかに告げた。

「妊娠しているそうだな」

「え?」

一瞬何を言われたのか分からなかった。

「子供が出来ているとなぜ言わなかった?」

責めるような和泉の言葉に、奈月は答える余裕がない程動揺していた。
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